映画「米」今井正監督! | 映画と旅と洞窟のブログ

映画「米」今井正監督!

日本を代表する社会派作家、名匠・今井正監督の映画「米」を見ました!ニコニコ
この作品は、美しい自然と貧しい農村に生きる人々の、厳しい生活と生きる事の哀しみに胸を打たれる、素晴らしい作品です。ビックリマーク

戦後日本の貧しい農漁村の抱えている問題や厳しい現実を、徹底したリアリズムと美しいロケーション撮影で描いた、日本ネオリアリズムの傑作です。合格

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<作品データ>ビックリマーク
映画「米」1957年 東映 118分
スタッフ:監督 今井正、原作 八木保太郎、音楽 芥川也寸志
キャスト:江原真二郎、南原伸二、中原ひとみ、原泉、木村功、加藤嘉、望月優子、中村雅子

☆受賞歴☆キラキラ
キネマ旬報ベスト・テン 日本映画ベスト・ワン、監督賞(今井正)
毎日映画コンクール 日本映画大賞、監督賞(今井正)、録音賞(岩田広一)
ブルーリボン賞 作品賞、監督賞(今井正)、主演女優賞(望月優子)

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<ストーリー>音譜
昭和30年、茨城県の霞ヶ浦湖畔の村で、今年も田植えが始まった。

貧しい農家の二男である田村次男は、働き口も無く居候のような窮屈な生活に嫌気が差していた。
田植えが終わるころ、村の若者たちと対岸の娘たちを冷やかす夜遊びに出かけるが、そこで千恵に淡い気持ちを抱く。ラブラブ

対岸の村では、貧しい小作農である千代と母親が、病弱な父に代わって血の滲むような重労働で米を作り続けていた。しかし地主から「貸した田んぼを返してくれ」と迫られていた。あせる

映画と旅と洞窟のブログ-米13

半農半漁の千恵の家では、うなぎ猟が唯一の現金収入だったが、毎年わかさぎ漁の帆引き船に漁場を荒らされて、不漁が続いていた。
うなぎ猟を手伝っていた千代は、ある日湖の上で次男と出会い、お互いにほのかな恋心を抱く。ドキドキ

やがて次男は、自衛隊帰りでぶらぶらしていた仙吉に誘われて帆曳き漁を始めるが、無鉄砲な仙吉は禁止されている漁業境界線を越えて漁をするようになった。波

そして千代の母親は貧しさから、禁止されている刺し網漁を始めるが・・・!?

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この映画の舞台は昭和30年の茨城県霞ヶ浦湖畔の農村です。ひらめき電球
現在のかすみがうら市(旧・出島村)で、僕の住んでいる街で撮影された映画です。べーっだ!

地元では有名な映画ですが、かなり古い作品なので公開当時に映画館で観た年配の方以外は、観たこと無い人の方が多いと思います。あせる

僕はこの作品を、若い頃に地元の上映会で見ましたが、記憶が薄れているので、購入したDVDを改めて観賞いたしました。グッド!

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映画のタイトルロールは、稲が刈り獲られた、寒々しい水田と暗い湖の情景を映す移動撮影と重厚な音楽で、悲劇を予感させる文芸作品の雰囲気がたっぷり出ています。カゼ

音楽監督は、後年に砂の器・八甲田山・八つ墓村等を手掛ける日本映画界の重鎮、芥川也寸志です。音譜
このオープニングだけで、すでに傑作の予感を感じさせます。グッド!

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映画は、鎮守の森の田植え祭りから始まります。クラッカー
この田植え祭りは、前々回のブログで紹介した、かすみがうら市牛渡の「平三坊まつり」です。ひらめき電球

現在も続いている、五穀豊穣と子孫繁栄を祈願する祭りですが、映画では今はもう見られない、「早乙女の田植え踊り」などが写されていて、とても貴重な記録となっています。目

『牛渡鹿嶋神社の平三坊まつり!』 http://amba.to/11s1TUp

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「米」は今井正監督が初めて手がけたカラー作品であり、昭和32年度のキネマ旬報ベストテンでベストワンに選出された日本映画の名作でもあります。星

しかし、今井正監督の作品の中では「ひめゆりの塔」「青い山脈」「武士道残酷物語」などの有名作品と比べると、知名度がかなり低い作品です。はてなマーク

これだけの名作で在りながら、ヒットもせず知名度が低いのは、この作品の持つ独特の“諦念と暗澹さ”なのかもしれません。しょぼん

映画と旅と洞窟のブログ-米11

作品では詳しく時代背景を描いてませんが、昭和30年といえば、まだ戦争の記憶が生々しく残る時代です。もみじ
GHQの占領政策が終わったのが昭和27年、日本が高度経済成長に入る直前で、農村ではいまだ手作業による米作りが行われています。おにぎり

昔の田植えは全て手作業で、家族総出の大仕事でした。DASH!
耕牛を使って田を耕し、肥料を撒いて、水田で身体を二つ折にし、稲の苗を手で数本ずつ植えていきます。あせる

田植えの後も、水車での水入れ、雑草を取り除く田の草取りなど、とても過酷で単調な作業です。ショック!

映画と旅と洞窟のブログ-米21

貧しい農村の若者たちは自分の境遇を嘆き、田舎暮らしに嫌気が差していますが、かといって都会に出て一旗上げようとも思いません。むっ

戦争に負け財産も職も無く、景気の波にも無関係な寒村の青年たちに、夢や希望はありません。DASH!
どうせ貧乏百姓の子が何をしても報われねえ、と諦めムードで、当ても無く日々を暮らしているだけです。得意げ

娯楽といえば、集まって酒を飲むか、仲間と対岸の村へ夜遊びに出かけて、農家の娘らを冷やかす位です。お酒

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青春ドラマの主人公の様に、逆境に立ち向かうわけでも、人生の深い苦悩や葛藤に悩むわけでもありません。汗
ドラマチックな悲劇でなく、リアルで貧しい農村の家族と若者達の日常が淡々と描かれているだけです。霧

イタリア・ネオリアリズムに影響を受けた今井監督は、経済成長や都会の華やかな生活に浮かれる中流家庭ではなく、社会の底辺で成すすべも無く生きる人間の姿をリアリズムの手法で詩情豊かに描いたのです。グッド!

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映画と旅と洞窟のブログ-米23

リアリズムを代表する場面として、この地方独特の帆曳き漁のシーンがあります。目
帆曳き漁は、霞ヶ浦独自の漁法で、明治から昭和30年代中頃まで、盛んに行われていました。音譜

数十隻のも帆引き船が湖上で大きな帆を張って、わかさぎ漁をする様子は、今ではとても貴重な映像です。合格
帆曳き船のシーンをご覧ください。ビックリマーク



昭和30年当時の風俗や生活、自然の風景がそのままフィルムに残されているのは、まるでドキュメンタリー映画の様です!合格

帆曳き漁は段々と漁獲量が減り、一時は全く廃れてしまいましたが、現在では観光帆曳き船が復元されて、霞ヶ浦の風物詩になっています。!!

観光帆曳き船の記事はこちら。ダウン
『霞ヶ浦の帆引き船!』 http://amba.to/13cSArC

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映画「米」は、社会の底辺で生きる人間たちの哀しみを、失われつつあった戦後日本の農村のリアルな姿を通して描いた、ジャパニーズ・ネオ・リアリズムの傑作です。合格

そして、昭和30年代の霞ヶ浦の美しい自然景観と豊かな茨城の風俗を題材にして、詩情豊かに描いた日本映画の名作として、語り継がれていくべき作品だと思います。音譜

多くの人に知って欲しい作品です、機会があればぜひご覧ください。ニコニコ
特に茨城県にお住まいの方は必見ですよ!ビックリマーク

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